みなさんは、「天然砥石」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
天然砥石とは、地層から採掘される砥石のことで、
何千年という長い時間をかけて堆積岩などが積み重なったものです。
刀剣や農具・調理器具をはじめとした生活用品など、
刃物の発展を陰ながら支えてきた日本の砥石。
今回は、その中でも「天然砥石」の歴史と種類、使い方をご紹介していきます。
砥石の起源

日本では、縄文・弥生時代から使用されていた痕跡のある砥石。
当初は整形された砂岩が、用いられていました。
古墳時代には、腰の帯につけてぶら下げる「提砥(さげと)」が登場。
実用品以外にも、身分の高さを表すものとの解釈があり、
実際に刀剣などと一緒に副葬品としても扱われるほどになります。
天然砥石が初めて書物に登場したのは、奈良時代の「正倉院文書」とされています。
その中で「青砥」という言葉が使われていました。
良質な天然砥石大国:日本
青砥(あおと)とは、京都の丹波地域で採掘される中砥石です。
造山活動が活発な日本では、良質な砥石が採掘され、国内外で高く評価されています。
そのため、全国に天然砥石の産地が存在し、多様な種類にはそれぞれの呼び方があります。
青砥(京都府 / 丹波)
古くからその名が知れていた青砥。
現在でもその品質の高さから根強い支持を得ています。
中砥石ながら、目が少し細かいことが特徴です。
切れ味が長持ちする他、仕上がりの光沢が美しいことから、
日本刀の艶出しにも使用されます。
京都府は、砥石の産地として名高く、
同じく合砥(あわせど)も最高級の品質の仕上げ砥石として評価されています。
大村砥(長崎県 / 大村 → 和歌山県 / 白浜)
現在は、採掘終了となってしまった希少な大村砥(おおむらと)。
長崎県の大村と、和歌山県の紀州白浜が産地として知られています。
両地域とも良質な砂岩がとれるため、荒く削るための荒砥として使用されてきました。
白名倉砥(愛知県 / 三河)
純白色が美しい中砥石。
名倉左近という人物が発見した山から、その名が由来しています。
5層以上もの層に分けられており、特に”コマ”という層があるのは、
名倉砥石だけだといわれています。
その他の産地と種類
このほかにも、熊本県の天草砥石や、愛媛県の伊予砥など、
素晴らしい品質の天然砥石と産地が存在しています。
それでは、具体的にどのような点が優れているのでしょうか。
人造砥石と比較してみましょう。
天然砥石と人造砥石の違い

人工的に作った砥石を人造砥石と呼びます。
この2つには、どのような違いがあるのでしょうか。
※以下の項目はあくまで傾向です。また、砥石には個体差が存在します。
研ぎの効率性
人造砥石は、削りがよくより効率的な研ぎができるため、
1回の研ぎ時間が短くなります。
天然砥石は、研ぎに時間がかかる分、良い刃がつけることができます。
そのため、切れ味が長持ちし、研ぎなおしの回数も減ります。
刃の仕上がり
天然砥石は、研いだ後の艶や曇りも魅力です。
一方、人造砥石では鏡面の仕上げが得意とされています。
目指している刃物の仕上がりによって、使い分けてもよいかもしれませんね。
希少性
現在では、採掘の終了などにより、希少性が高まった天然砥石。
そのため最高級のものに関しては、
人造砥石の10倍ほどの価値がつけられることも珍しくありません。
この希少性に関しては、人造砥石では比較できないものとなっています。
結局どちらがよいの?
天然砥石と人造砥石には、それぞれのよさがあります。
目指したい刃物の状態や、必要な砥石の粗さの種類などによって、
適切に使い分けましょう。
天然砥石を使う前に
ここからは、実際に天然砥石を扱う際の注意点を、
それぞれの対策とあわせて、3点ご紹介します。
1. 砥石を安定させる
天然砥石は、そのまま使用すると、ぐらぐらして研ぎにくい場合があります。
そのため、以下の対応が考えられます。
- 砥石の裏側を削って平面にする
- 砥石に合わせて砥石台を作成する
砥石を削る場合は、塀に使うようなブロックと研磨剤を使用すると、
比較的簡単に作業ができます。
2. 研泥/研汁の量を適切にする
天然砥石は、その硬さにばらつきがあります。
その結果、研汁が出にくかったり、鋭利な刃が付きにくかったりします。
そんなときは、以下の方法を試してみてください。
- 水を多くかける
- 名倉砥を使用する
これにより、研ぎ面の環境が整います。
3. 地を引くことが多い
塊のまま脱落した石英が、筋を描くように研ぎ面を削ることを「地を引く」と言い、
特に硬めの天然砥石でみられる現象です。
完全に防ぐことはできませんが、前述した「水や名倉砥の活用」で緩和できます。
天然砥石の高まる需要に
天然砥石を使ってみたいけど、手が出しづらい…
そんな方へ選択肢の1つとして、天然砥石を再現した人造砥石をご紹介します。
エビ印 青砥石
天然青砥のような滑らかで心地よい研ぎ味を再現した、
ナニワのこだわりが詰まった人造砥石です。
天然の青砥石の発掘が難しくなり、価格も高騰している中で、その代替として開発されました。
天然砥石は粒度にバラつきがあるため、仕上がりにムラが出ることもありますが、
こちらの砥石は人造なため粒度が安定した#2000番相当。
常に一定の研ぎ感が得られるため、天然砥の風合いを安定した環境で試したい方に特におすすめです。
天然砥石の魅力を手軽に、そして確かな品質で――
ナニワ エビ印 青砥石は、妥協しないあなたにおすすめな砥石です。
エビ印 ニュー大村砥
ニュー大村砥は、希少な天然大村砥の研ぎ感を忠実に再現した高品質な人造砥石です。
柔らかく仕上がりが美しい砥石でありながら、しっかりとした研磨力も兼ね備えており、
多くのユーザーに繰り返し選ばれている信頼の一品です。
また、サイズ展開は全4種類。
これは天然大村砥石の切り出し方に基づいたサイズを採用しており、
砥石本来の使い心地や雰囲気を大切にした、
メーカーのこだわりが詰まった設計となっています。
天然の風合いを活かしつつ、安定した品質で使いやすい――
「ニュー大村砥」は、職人の手にも初心者の手にもなじむ砥石です。
まとめ
いかがでしたか?今回は、天然砥石の起源から種類、使い方まで解説していきました。
多くのユーザーを魅了する天然砥石。
ここ日本ならではの成り立ちと希少性に驚きを隠せません。
ぜひ一度試してみては、いかがでしょうか。
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最後までお読みいただきありがとうございました!