鍬と鋤の違い。似てるけど全く違う二千年の歴史から深堀る基本農具

鍬と鋤の違い。似てるけど全く違う二千年の歴史から深堀る基本農具

こんにちは、ナニワ研磨工業公式通販サイト「TOGIBU」編集部です。

 

日本における農業の起源は、紀元前まで遡ります。

2000年以上続いてきた歴史の中で、特に活躍した農具があります。

「鍬(くわ)」「鋤(すき)」です。

さて、今その形を正確に思い浮かべられた方は、どれだけいらっしゃるでしょうか?

 

現代でも農業や家庭菜園などで使われる農具、「鍬」と「鋤」。

今回は、両者の"違い"を比較しながら、解説していきます。

 

 

ずばり、鍬と鋤の違いとは。

 

「用途」「形状」、「使い方」の違いです。

 

2つが特に活躍する「稲作」を題材にして、比較してみましょう。

 

 

「用途」の違い | 稲作における役割

弥生時代にはじまったとされる、稲作

新たな技術の伝来は、「新たな道具」をもたらしました。

 

 

稲作の大まかな流れ

用途の解説の前に、具体的な作業内容をみてみましょう。

稲作では1年のサイクルの中で、以下のような農作業が行われます。

  1. 田起こし・代掻き | 田んぼの環境を整える
  2. 苗作り | 種になる米から苗を育てる
  3. 田植え | 田んぼに苗を植える
  4. 草取り・防除など | 田んぼの管理をする
  5. 稲刈り | 育った稲を収穫する
  6. 脱穀・乾燥・籾摺り | 食べるために加工する

 

鍬と鋤は、主に「田起こし(たおこし)」で使われました。

 

 

田起こしとその目的

一言でいうと、「田んぼを耕す作業」です。

目的は、大きく2つ。

  • 乾いた土を掘り起こし、空気を送り込む
  • 肥料や藁・雑草などを、土の中に混ぜ込む(=鋤きこむ)

これを行うことで、「土壌に豊富な養分が行きわたる」ようになります。

 

 

用途の違い | 結論 = どちらも土を耕す農具

 

結論としては、「違いがない」といえるでしょう。

どちらも豊かな土壌を作る用途に使用されるためです。

ではなぜ使い分けがされるのでしょうか。

それぞれの形から紐解いていきましょう。

 

 

「形状」の違い | 伝来から現代まで

 

伝来から現在まで、鍬と鋤は形を変えながら受け継がれてきました。



鍬の形状

鍬は、3パーツに分けられます。

それぞれを「柄(え)」、「刃先(はさき)」、「風呂(ふろ)」と呼びます。

  1. 柄:持ち手
  2. 刃先:土に入り込む刃
  3. 風呂:柄と刃先をつなぐ接続部

鍬は、柄に対して、刃先が「鋭角についている」のが、特徴です。

これらの「形状」と「木製か/金属製か」により、多様な種類が存在します。

 

鍬の種類

歴史の中で、鍬はその形を変えてきました。

代表的な鍬の種類と、その発祥年代は以下のようになります。

  1. 弥生時代:木製鍬 - すべて木製
  2. 古墳時代:風呂鍬(ふろぐわ) - 柄、風呂=木製、刃先=金属
  3. 江戸時代(17世紀中頃):唐鍬(とうぐわ) - 柄=木製、風呂、刃先=金属製
  4. 江戸時代(18世紀中頃):備中鍬(びっちゅうぐわ) - 金属の刃先がフォーク状に

※出典:河野通明. "農耕・畜産・山樵用具". 国際常民文化研究叢書6. 2014, http://icfcs.kanagawa-u.ac.jp/publication/sosho/report06_02_02.pdf (参照2025-04-12)

基本的に刃先が重い方が扱いやすく、地面も砕きやすいです。

時代ごとのニーズの変化と技術の向上により、徐々に最適化されてきたようですね。

 

 

鋤の形状

鋤の構成は、鍬と似ています。

  1. 柄:持ち手
  2. 鋤先:土に入り込む刃
  3. 風呂:柄と鋤先をつなぐ接続部

持ち手に対して、鋤先が「直線状、または鈍角についている」ことが、鍬との大きな違いです。

 

 

鋤の種類

鋤は、その起源によって「鋤」と「踏鋤(ふみすき)」に、大別されます。

  1. 弥生時代:鋤 - 稲作民による持ち込み
  2. 古墳時代:踏鋤 - 朝鮮系渡来人による持ち込み

鋤は現代でいう、シャベルやスコップのようなものです。

踏鋤も用途は同じですが、全長が肩の高さを超えるほど大きいです。

鋤が、地面に対して直角に入るのに対し、踏鋤は斜めに入ります。

 

 

形状の違い | 結論 = 「柄と刃先の角度」「刃先の形」が違う

 

パーツの分け方は似ている鍬と鋤ですが、形には大きな違いがありました。

それでは、具体的にどのように使うのかをみてみましょう。

 

 

 

「使い方」の違い | 実際に使ってみる

 

それでは2つの使い方を比べてみましょう。

同じ掘る作業でもアプローチがかなり異なります。

 

 

鍬の使い方

種類にとわず、基本的な使い方になります。

 

持ち方

利き手で柄の中央を、逆の手で柄の端を持ちます。

 

掘り方

利き手側の足を前に出して、地面に対し「平行に近い角度」で、刃先を入れます。

手前に軽く引き、表面から浅く土を削るように、サクサクと動かします。

 

ポイント

刃の重みを活かして、上から軽くおろすようにしましょう。

1度に大きく掘らずに、複数回に分けて行いましょう。

土を細かく柔らかくするなら「刃先の分かれた鍬」を、土を掬い上げたいなら「平たい鍬」を選びましょう。

 

 

 

鋤の使い方

鍬に比べて、大きく掘りだせるのが特徴です。

 

持ち方

取っ手を利き手でもち、逆の手で柄を掴みます。

 

掘り方

鋤を地面に立てて、刃の部分に足をかけます。

体重をかけて地面に刺したら、"てこの原理"で土を掘り起こします。

 

ポイント

お使いの鋤の種類によって地面に対しての角度に気をつけましょう。

※通常の鋤 = 地面に対して「直角」、踏鋤 = 「浅め」

 

 

使い方の違い | 結論 = 「掘る原理」と「量」

鍬は「土を削る」ように、鋤は「てこの原理で土を起こす」ように、堀り進めていましたね。

土を掘る目的や土の硬さ、水分量などによって使い分けるのがよいでしょう。

 

 

 

鍬と鋤のお手入れの方法

 

使い終わったあとのメンテナンスに関しては、どちらも同じです。

「土や泥を洗い流す」「水気を切って風通しのよい冷暗所で保管する」

以上の2点を守れば、長くお使いいただけます。

 

鎌の研ぎ方についてはこちら

https://youtu.be/UYJreOJmI4k?si=E3hbyrepRCZp_Zr-

 

 

 

ミニコラム:明日話したくなる雑学



昆虫の「クワガタムシ」の由来

 

夏の昆虫の代名詞と言える、カブトムシとクワガタムシ。

カブトムシの由来はなんとなく「兜かな?」と予想がつきますが、クワガタの由来はご存じでしょうか。

クワガタは、漢字の「鍬形」が由来で、兜の中で鍬を模したデザインのことです。

昆虫をつかった相撲は、一説によると「悪天候で仕事ができなくなってしまった漁師がはじめた」と言われています。

時代を超えて魅了し続けるカブトムシとクワガタムシに、強さの象徴としてその名がつくのも、うなずけますね。

 

 

すき焼きの由来

 

料理のすき焼きも、「平たい鋤を鉄板がわりにして牛肉を焼いたもの」を語源とする説があります。

昆虫相撲もすき焼きも江戸時代が発祥と言われています。

当時の遊び心には、ワクワクさせられますね。



 

まとめ

今回は、鍬と鋤の違いについて解説していきました。

 

世界でも基本的な農具とされている「鍬」と「鋤」。

意外と知らないことも多かったと思います。

今回の記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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